中学生の子が学校に行けない時期が続くと、高校受験が心配になります。「内申点がつかないのでは」「欠席が多いと不合格になるのでは」と不安な保護者の方も多いと思います。
この記事では、文部科学省の通知と、いくつかの都道府県の選抜要項をもとに、調査書(内申書)と高校受験の関係を整理します。出席扱いの要件や相談の流れは、出席扱いの要件と相談の流れにまとめています。
先にポイントをまとめます。
- 調査書の中身や、入試での使い方は、都道府県や学校によって大きく違います。
- 国は教育委員会などに、不登校の生徒を出席の状況だけで不利に扱わないよう配慮することが望まれる、としています。
- 自己申告書や、調査書を使わない選抜など、配慮のしくみを設けている都道府県もあります。
入試のしくみは、毎年のように変わります。この記事で紹介する都道府県の例は、その年度の例です。必ず、受験する都道府県の最新の選抜要項を確認してください。 合否を決めるのは、各高校の校長です。
調査書(内申書)とは
調査書は、中学校の校長が作って、進学先の高校の校長に送る書類です。学校教育法施行規則の第78条で定められています。「内申書」と呼ばれることもあります。
同じ施行規則の第90条は、高校の入学を決めるしくみを定めています。調査書や学力検査の成績などを資料にした選抜に基づき、高校の校長が許可します。一方で、特別の事情があるときは、調査書を選抜の資料にしないこともできる、としています(学校教育法施行規則)。
調査書の成績を点数にしたものは、一般に「内申点」と呼ばれます。例えば東京都の実施要綱では、これを「調査書点」と呼んでいます。
調査書は指導要録をもとに作られる
調査書のもとになるのは、中学校の指導要録です。指導要録とは、学校が子ども一人ひとりの出欠や成績を記録する、公式の書類です。平成31年の学習評価の通知も、「指導要録を基に作成される調査書」と書いています。
出席扱い・成績評価と調査書のつながり
出席扱いになった日は、指導要録の出席日数に数えられます。欠席中の学習の成果を成績評価に反映できる場合もあります(令和6年の施行規則改正)。反映されれば、指導要録の評定や所見に表れます。
つまり、出席扱いや成績評価は、指導要録を通じて調査書につながります。ただし、どちらも判断するのは在籍する学校です。評定がつく場合と文章で書く場合の違いは、出席扱いと成績評価・通知表の関係で詳しく説明しています。
また、調査書に出欠の欄があるかどうかは、都道府県の様式によって違います。下の東京都と千葉県の令和9年度の例では、調査書の記載事項に出欠の記録が挙げられていません。
出席日数・評定の扱い(都道府県で違う)
高校入試の実施方法は、実施者である各教育委員会などが決めます。文部科学省の令和8年6月の通知にも、「実施方法等は、実施者が決定し」とあります。調査書のどの学年の評定を使うか、学力検査とどんな比率にするかも、それぞれで違います。
ここでは、2つの都県の令和9年度選抜(令和9年春の入試)の例を紹介します。
例:東京都の令和9年度選抜(都立高校)
東京都教育委員会の令和9年度の実施要綱(令和8年9月公表)では、次のように定めています。
- 使う評定は3年生のもの:中学3年の12月31日時点の、観点別学習状況の評価と評定を記載します。観点別学習状況の評価は、教科ごとに観点に分けてみる評価です。評定は、教科ごとの5段階の成績です(くわしくは成績評価の記事)。3年生の1学期・2学期の成績を十分参考にするとしています。
- 出欠の記録は記載事項にない:調査書の記載事項は、学籍、各教科の学習の記録、総合的な学習の時間、諸活動の記録などです。出欠の記録は挙げられていません。
- 学力検査との比率:学力検査の得点と調査書点の比率は、全日制では原則として7対3です。
- 評定がつけられない教科:出席日数が少なく、参考にできる資料等を使っても評価できない教科は、斜線(/)とします。この場合、高校が学力検査の得点など参考にできる資料を使って、調査書点を求めます。
令和9年度は、7対3と10対0の両方で計算し、高いほうを使う方法を、新たに2校で行うと発表されています(報道発表)。10対0は、調査書点を使わない計算です。
例:千葉県の令和9年度選抜(公立高校)
千葉県の令和9年度の実施要項(令和8年9月公表)では、調査書の評定の書き方が東京都と違います。
- 1年生から3年生までの評定を書く:1・2年生の評定は指導要録から写し、3年生の評定も記入します。3年間の合計も書く欄があります。
- 評定に斜線がある場合:理由などを備考の欄に書くとしています。
また千葉県は、令和8年度選抜から、調査書の記載項目を減らしました(令和6年12月の発表)。削った項目は、出欠の記録、総合的な学習の時間の記録、行動の記録(3年生)、総合所見です。理由は、配慮の必要な生徒の心理的負担等とならないよう、と説明されています。
このように、隣り合う都県でも、使う学年や記載事項が違います。お子さんが中1・中2なら、受験する年度にはさらに変わっているかもしれません。受験する年度の要項で確かめてください。
国の通知の考え方
文部科学省は、令和8年6月30日の「高等学校入学者選抜等における配慮事項等について(通知)」で、教育委員会などに配慮をお願いしています。不登校の生徒については、次のように書いたうえで、配慮を行うことが「望まれます」としています。
在籍する学校における出席の状況のみをもって不利益な取扱い(例えば、欠席日数のみをもって出願を制限するなど)をしないようにする
同じ通知は、不登校の生徒の中には、懸命に学習を続けている生徒もいるとしています。学ぶ場は、教育支援センターやフリースクール、自宅などです。教育支援センターは、教育委員会などが設ける、不登校の子のための学びと相談の場です。そのうえで、学ぶ意欲や能力のある生徒の日頃の努力を、適切に評価することが望まれるとしています。
具体的には、次のような配慮が「望まれる」とされています。
- 生徒の自己申告書や、学校以外の場(家庭でのオンライン学習を含む)での学習状況の資料を、選抜で適切に考えに入れること
- 不登校の生徒が志願しやすいように、募集のときの内容を工夫すること
調査書についても、学習評価などの記載が少ないことをもって、不利益にならないよう配慮をお願いしています。令和元年の不登校児童生徒への支援の通知も、同じ考え方です。高校で学ぶ意欲や能力のある不登校生徒を、適切に評価することが望まれるとしています。
ただし、これは教育委員会などへの「お願い」です。実際にどう扱うかは、それぞれの実施者が決めます。
不登校の受験生への配慮の例
文部科学省は毎年、各都道府県の公立高校入試の状況を調べて公表しています。令和7年度の調査には、「不登校経験のある生徒に対する配慮」という項目があります。そこでは、次のような取組の区分が示されています。
- 調査書等に、学校以外の場(家庭を含む)での学習状況等を反映する
- 中学校長が、副申書など、生徒の学習状況を書いた書類を出す
- 本人が、学校以外の場での学習状況等を自己申告書として出す
- 調査書に出欠の記録を求めない
- 不登校経験者が受検しやすい学科やコースを置く(チャレンジスクールなど)
どれを行っているかは、都道府県によって違います。ここでは、公式の資料で確かめられた例を紹介します。
自己申告書(東京都の令和9年度の例)
東京都の令和9年度の出願書類についての注意事項等では、自己申告書を出せるとしています。都立高校に理解してほしい事情を説明する必要がある場合です。
- 様式には、本人と保護者がそれぞれ「高等学校に理解してほしい事柄」を書く欄があります。
- 志願者と保護者が書いて封をし、在学する中学校の校長に出します。中学校の校長が、出願書類と一緒に高校へ送ります。
同じ「自己申告書」でも、中身は都道府県で違います。例えば千葉県の令和9年度の実施要項では、自己申告書は障害や病気、けがなどの状況を申告するものです。選抜の資料にはしない、とされています。
調査書を使わない選抜(山梨県の令和9年度の例)
山梨県教育委員会は、県立高校と甲府市立甲府商業高校で「長期欠席者等を対象とした特別選抜」を行っています。全日制の後期募集と定時制で、調査書を合否の資料に使わない選抜です(最新の入試情報)。
令和9年度の基本事項(令和8年5月)では、対象の「長期欠席者等」を次のように定めています。
- 欠席が年間30日以上の人
- 欠席が30日未満でも、教室での学びが十分にできていない人のうち、次のどちらかに当たる人
- 病気や家庭の事情(いわゆるヤングケアラー等)などで欠席が多い
- 保健室や教育支援センター、フリースクールへの登校等で、在籍校で出席扱いになっている
選抜は、5教科の学力検査と個人面接で行います。出願には、在籍する中学校の校長が認めることが必要です。一般選抜との併願はできません。
Q&A(令和8年7月)によると、本人が出す自己申告書には、欠席等の理由や教室以外での学習の状況、志望動機などを書きます。また、入学後は、一般選抜で合格した生徒と同じく、学級で一緒に学ぶことを前提にしているとしています。詳しい手続きは、10月に公表予定の実施要項で示されます。
不登校経験者が受検しやすい学校(東京都の令和9年度の例)
東京都には、定時制課程の単位制高校として「チャレンジスクール」があります。単位制は、学年による教育課程の区切りを設けないしくみです(施行規則第103条)。令和9年度のチャレンジスクールの実施要綱では、調査書の提出は必要ないとしています。第1学年相当の選考は、志願申告書、面接、作文などで行います。
文部科学省の調査でも、不登校経験者が受検しやすい学科やコースの例として、チャレンジスクールの名前が挙がっています。
ここで紹介した都県の例は、いずれも令和9年度のものです。受験する年度の要項で、改めて確認してください。
通信制・定時制という選択肢
高校には、全日制のほかに、定時制と通信制の課程があります。上の例のとおり、定時制で不登校経験者向けの選抜を行っている都道府県もあります。
通信制の課程は、添削指導・面接指導・試験を組み合わせて学ぶしくみです(令和6年2月の通知)。面接指導は、学校の施設などで、対面で受ける指導です。
全日制や定時制の高校に入ってから不登校になった場合も、通信教育で単位をとれるしくみがあります(施行規則第88条の4)。学校が教育上有益と認めるときに行えるものです。高校での制度は、出席扱いの記事の「高校生の場合」で紹介しています。
定時制・通信制の選抜方法も、都道府県や学校によって違います。私立の学校は、学校ごとの募集要項を確認してください。通い方や学び方が本人に合うかは、学校説明会などで確かめるのが確実です。
今からできること
入試の日が近づいてから慌てないように、今からできることをまとめます。
家での学習の記録を続ける
家での学習の記録は、学校が成績評価を考えるときの材料の一つになります(成績評価の記事)。東京都の実施要綱にも、中学校が調査書の評価を考える際に「参考にできる資料等」を活用する、という記述があります。どの資料を使うかは、学校が判断します。記録のつけ方は、学校に伝わる学習記録のつけ方で紹介しています。
記録は、自己申告書を書くときにも役立ちます。山梨県の特別選抜のように、教室以外での学習の状況を書く様式もあります。何を、どのくらい続けてきたかを、具体的に書けるようになります。
学期ごとに、評定や出席扱いを確認する
千葉県のように、1年生からの評定を調査書に書く県もあります。中1・中2のうちから、学期ごとに次のことを学校と確かめておくと安心です。
- 出席扱いになっているか、何日くらいか
- 評定がつきそうな教科と、文章で書かれる教科
- 評価の材料として、何を出せばよいか
受験する都道府県の選抜要項を読む
選抜要項(実施要項・実施要綱など、呼び方は都道府県で違います)は、教育委員会のウェブサイトで公開されています。例えば東京都と千葉県の令和9年度の要項は、令和8年9月に公表されました。調査書の使い方、自己申告書の有無、特別な選抜があるかを確認してください。
本人の気持ちを大切にする
志望校の選び方は、入試の条件だけでは決まりません。学校説明会や個別相談で、本人が「ここなら通えそう」と思えるかも大事です。体調や気持ちに合わせて、無理のない範囲で準備を進めてください。
学校に聞くこと
調査書を作るのは中学校です。担任の先生や進路指導の先生に、次のようなことを聞いておくと、見通しが立ちやすくなります。
調査書と成績について
- 調査書にどの学年の評定が載るか:受験する都道府県の選抜では、何年生の評定を使うか。
- 評定がつかない教科はどうなるか:斜線になる場合、調査書や選抜でどう扱われるか。
- 出欠の記録は載るか:調査書に出欠の欄があるか。あれば、出席扱いの日はどう書かれるか。
- 家庭の学習をどう評価に生かせるか:成績評価の材料として、何をいつまでに出せばよいか。
配慮や選び方について
- 自己申告書や副申書を出せるか:出せる場合、どんな様式で、何を書くのか。
- 不登校の生徒を対象にした選抜や学校があるか:特別な選抜、定時制・通信制の学校など。
- 過去の進路の例:似た状況の先輩が、どんな学校に進んだか(個人が特定されない範囲で)。
- 面談の予定:進路の相談を、いつ、誰と、どんな形でできるか。本人が学校に来られない場合の方法。
調査書をどう書くかを決めるのは中学校、合否を決めるのは高校です。保護者ができるのは、早めに確認して、必要な資料をそろえておくことです。
記録をためておくなら、とどけ帳で
とどけ帳は、毎日の学習記録から、学校に出す報告書の下書きをAIがつくるアプリです。学期ごとの成績の相談や、進路の面談の前に、記録をまとめておくのに使えます。
参考資料
- 文部科学省「高等学校入学者選抜等における配慮事項等について(通知)」(PDF)(令和8年6月30日、8文科初第882号)
- 文部科学省「令和7年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」(PDF)(令和8年2月17日更新版)
- 文部科学省「高等学校入学者選抜について」
- 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)
- 文部科学省「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(平成31年3月29日)
- 文部科学省「高等学校等における多様な学習ニーズに対応した柔軟で質の高い学びの実現について(通知)」(令和6年2月13日)
- 学校教育法施行規則(第78条、第88条の4、第90条、第103条)
- 東京都教育委員会「令和9年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について」(令和8年9月17日):実施要綱(PDF)/チャレンジスクール(PDF)/出願書類についての注意事項等(PDF)/様式(抜粋, PDF)
- 千葉県教育委員会「令和9年度千葉県公立高等学校入学者選抜実施要項について」(令和8年9月11日。実施要項(PDF))
- 千葉県教育委員会「令和8年度(令和7年度実施)以降の千葉県公立高等学校入学者選抜の改善点について」(令和6年12月18日)
- 山梨県教育委員会「最新の入試情報」:令和9年度山梨県立高等学校入学者選抜の基本事項(PDF)/特別選抜制度に関するQ&A(PDF)